青い傘
 放課後、昇降口で靴に履き替えていると、部活を終えた運動部の子が大勢やって来た。
 賑やかな声に囲まれた私は、少し端に寄る。
 今日は委員会があったので帰りの時間が遅くなった。
 運動部の下校ラッシュと重なったのだ。

「朋ちゃん、珍しいねこんな時間に。美術部も遅かったの?」
「えっ、朋ちゃんって運動部だと思ってた。へえー、文科系なんだ」
 私は髪が短くて背も高いせいか、運動部の印象を持たれている。
 実際にスポーツは好きだけど、絵も同じくらい好きだから美術部を選んだ。

 話しかけてきたのはバスケ部員で、同じクラスの二人である。
 クラス替えで4月に知り合ったばかりだけど、とても気さくに接してくれるので、自然に会話するようになった。
 噂では、彼女達は人気者で、バレンタインなどはチョコをたくさんもらうそう。
 女子高ならではのことで、宝塚的な人気を得ている。
 つまり、男の子みたいにかっこいいのだ。

「じゃあね、朋ちゃん」
「バイバーイ」
 私に手を振ると、二人は傘立てから傘を抜き出し、昇降口を出て行った。

(男の子みたいでかっこよくても、傘はパステルカラーなんだ)
 華奢なシルエットをしばらく見つめてから、端っこに残る青い傘を取った。
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