誠狼異聞―斎藤一、闇夜に駆けよ―
一 池田屋
夜半過ぎである。
黒々とした鴨川【かもがわ】の水面を、斎藤一は見下ろしている。
何を見ている、というわけでもない。
音ばかりは涼しげに流れる川の、時折ちらりと反射する星影を、ただ視界にとらえながら、三条橋のたもとに佇【たたず】んでいる。
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