誠狼異聞―斎藤一、闇夜に駆けよ―
勝は斎藤の飲みっぷりを誉めた。
斎藤はそれに応えず、土方が言って寄越した思惑を勝に洩らした。
「今年中に伊東さんを殺す。御陵衛士も、大人数で囲い込んで始末する」
「決定事項なのかい。まあ、せいぜい頑張れよ。
新撰組にはまだやってもらわなけりゃならねえことがごまんとある。まだまだ乱世は続くだろうからな。
こんなところで死ぬなよ、斎藤一」
斎藤は、勝の酌を受け、また一息に酒を飲み干した。
舌から喉にかけて、じわりと熱い。
何も入れていなかった胃が、よじれるように痛んだ。
「斎藤一の名は、近々変える」
御陵衛士を裏切るときに名前も捨てようと、不意に思い付いた。