誠狼異聞―斎藤一、闇夜に駆けよ―
勝は斎藤の理解など求めていないように見えた。
自分が満足するまで滔々【とうとう】と語った後、ようやく斎藤に、問うて然るべき問いを投げ掛けた。
「おまえさん、名は? どこの道場に関わってる? 答えたくねえかもしれねえが、頭と胴体がくっついたままでいたけりゃ、正直に喋ることだな。人殺しは打ち首だぜ。
まあ、死んだ男の方も身元不明の流れ者ってことにしてあるんで、ろくな捜査もできやしねえだろうが」
きな臭い。
それ以上だ。
斎藤は唇を噛んだ。
自分はやはり死ぬべきではないのかと思った。
人殺しの罪で家族や試衛館の皆に迷惑を掛けるより、潔く死んで罪を償うべきではないのか。