誠狼異聞―斎藤一、闇夜に駆けよ―


「おまえさん自身は、一足先に京都に行け。でなけりゃ、岡っ引きにしょっ引かれることになるぜ。


京都には、俺の縁故の道場がある。そこで師範のふりでもして、浪士組の到着を待ってろ。名前も変えるんだ」



「名前を、変える」



「山口の姓を捨てろ。しばらくは親の顔を見られないと思え。


そうさな、斎藤一とでも名乗れ。山口なんて丸っこい響きよりも、斎藤っていう、すぱっとした音の方がおまえさんに似合うじゃねえか」


< 55 / 155 >

この作品をシェア

pagetop