誠狼異聞―斎藤一、闇夜に駆けよ―


これまでの日本のこととは、主に徳川家が江戸に幕府を開いてからの二百六十年余りの歴史を指している。


この間、日本で最も位の高い人物である天皇は、由緒ある公家を従えて京都に起居していた。


一方、日本で最も権力を持つ人物である将軍は、武家の筆頭として江戸城に君臨していた。


政治の実権を握っていたのは徳川家の将軍であり、実際の政治は藩ごとに分担されて行われていた。



これからの日本のこととは、日本一国の内政のみならず、


アメリカ、イギリス、ロシア、オランダ、清【しん】国、そういった外国との関わり合いの中で日本がどうあるべきかを論ずるのだ。


世論の主流は攘夷【じょうい】、すなわち、外国勢力を日本から追い払おうという考えである。


新撰組の面々も、その上司に当たる会津藩の首脳陣も、敵対勢力である長州藩なども、攘夷を掲げる点では共通している。


< 94 / 155 >

この作品をシェア

pagetop