本当の遠距離恋愛 1

 「ママも英会話や、日本舞踊、囲碁、将棋・・
  他にもいろんな習い事してるのよ」

 「そうなんですか!」

 着物を着たママは少し頬を赤らめていて、
 女の愛美からみても凄く色っぽい。

 「で、看護師をしてる愛美ちゃんだったら
  いいお友達知ってるかな?と思って」

 「はあ・・・」

 「また探しといてね」
 
 「はい」

 「時間とらせて悪かったわね、気をつけて帰ってね」

 「はい、お疲れ様でした!」

 

 タクシーの中で、愛美はママの言葉を思い出し
 考えていた。

 東京の夜に星空は見えない。
 明かりが多すぎるらしい。


 銀座の街並を眺める。
 ここで働くもの。
 ここで飲みたくても飲めないもの。
 贅のかぎりを尽くすもの。
 夢をみて挫折するもの。
 
 様々なドラマがここにはある。

 愛美はタクシーの窓に頭をつけ、ボーっと外を
 見ていた。

 (高校の友だちは結婚してるし・・・)

 

 タクシーがマンションの前につき3500円程度を支払い
 マンションの中に消えていった。


 看護師だけをしてた時は、考えられないお金の使い方だ。

 自分のお財布からタクシー代なんて払ったことがない。
 意地でも地下鉄に乗るか、終電を乗り過ごした場合は、
 安いカラオケや、漫画喫茶で始発を待つ。

 
 
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