本当の遠距離恋愛 1
部屋に着くと、午前2時を過ぎていた。
急いでシャワーを浴び、ベッドに潜り込む。
目覚ましを7時にセットし、眠りにつく。
(あ~4時間ちょっとしか寝れない・・)
その頃、紗希は分娩室にいた。
1時過ぎに分娩室に入り、もうすぐ産まれそうだ。
「うう~ん!!」
「はい!いきんで!」
医師と助産師、看護師2名が立ち会う。
患者は37歳の初産。高齢出産である。
「頑張って!赤ちゃんの頭見えてますよ!」
分娩室は患者の苦しそうないきみ声とスタッフの励ます声、
赤ちゃんの心臓の音、産声をあげた時羊水を吸い取る吸引機の音。
分娩室の隣では、産湯の用意、万が一の事も考え新生児救急カートの用意、
保育器のセット。
慌しかったが、産まれるという何か特別な荘厳とした空気が
張り詰めている。
「はい!もういきまないで!手を胸において、ハッハッハッして!」
「ハッハッハッハッ!」
「オギャー!」
「おめでとうございます!元気な男の子ですよ!」
「ありがとうございます!!」
初産の女性は感極まり泣いている。
紗希は助産師から赤ちゃんを受け取り隣の処置室へ行き、
産湯にそっと入れた。
赤ちゃんはびっくりして「オギャー!オギャー!」と
大きな声で泣いている。
薄いガーゼのタオルを赤ちゃんの手や胸にそっとかけると
泣きやむ。
紗希はこの瞬間がとても好きだ。
小さいながらグッと手を握っている。
その後真っ白な産着を着せ、足の裏にマジックで母親の氏名を書く。
くすぐったいのであろう、足を曲げたり伸ばしたりしてうまく書けない。
足首にも同様に母親の氏名、産まれた時刻、性別、体重、身長などが
記入されたバンドをはめる。
母親の方の処置も終わり、ストレッチャーで病室へ運ぶ。
疲れるがなんか嬉しい。
ナースステーションに戻りカルテ記入をする。