本当の遠距離恋愛 1
 紗希は仕事が一段落したので、カルテ記入を始めた。

 土日は15時から面会時間であり、病棟は賑やかになる。


 子供が産まれ喜び勇んでくる若い父親。
 初孫の誕生にハンカチで目頭を押さえる老夫婦。
 陣痛で苦しんでいる娘の様子を伺いに来る母親。
 
 
 様々な面会者がくる。


 産婦人科病棟は他の外科や内科などと比べると、
  独特というか異質な雰囲気がある。

 産婦人科と聞くと「おめでたい」と感じる人も多いだろう。
 しかし、必ずしもそうではない。
 
 無事に産まれてくる赤ちゃんばかりではない。
 死産や、障害をもって産まれてくる子だってたくさんいる。

 その前に流産や早産の危機で入院している妊婦さんもいる。

 いや、妊娠できない人もいる。
 若くして子宮がんに罹り、子宮全摘の人もいる。
  

 そういう人が全てこの5階の「産婦人科病棟」に
 入院をしている。

 だから、問題はよくおきる。
 先日も赤ちゃんの夜泣きがウルサイと血相をかえて、
 ナースステーションに飛び込んできた患者がいた。


 この病棟はナースステーションを軸にしその周りを
 病室が囲んでいる形になっている。

 北側が不妊治療や流産・早産の方の部屋。
 その180度反対の南側が出産する人・された人の部屋。
 そして、分娩室や新生児室も隣接している。

 東西は主に婦人科の病室。
 
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