本当の遠距離恋愛 1
 居酒屋に入ってもしばらく2人の間に会話はなかった。

 たんたんとビールを飲み、おつまみを食べている。

 居酒屋にそぐわない空気を出していた。
 聞こえるのは、
 「王様ゲーム!」「イエーイ!!」と、
 「部長なんてさ~!」
 ぐらいなもんだ。

 
 紗希は意を決し、

 「愛美、何かあったの?」
 と尋ねた。

 「・・・・・・」
 やはり返事はない。

 「ん?」と優しく愛美の顔を覗き込むと、

 「大ちゃんが・・・」 
 と言葉を発した。


 「大ちゃんがどうかしたの?」
 紗希は嫌な予感がした。

 大ちゃんとは、付き合って2年になる愛美の彼氏だ。
 広告代理店で働くサラリーマン。
愛美より5つ上の30歳。
 紗希も会ったことはあるが、
  優しくて、かっこいい、まあ好青年という感じ。
 付き合って2年も経つのに俗にいう「ラブラブ」だ。


 こんなにまで愛美が落ち込むということは・・・
 なんか、不治の病にでもなったのか!?

 「大ちゃんが、大ちゃんが・・・」

 「なに!?大ちゃんがどうしたの!」

 次に愛美の口から出てくる言葉に紗希は
 全神経を集中させた。

 (ガンか?それとも・・・)

 「大ちゃんが、来月から福岡に転勤なの!」

 
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