クールな准教授の焦れ恋講義
「だから卒業式の日、迷ったけど、ああ返事をするしかなかったんだ。それで諦めてくれるならそれでよかったし、なのにお前ときたら……」

 そこでようやく先生と目が合った。下から見上げるように視線が合ったので勝手に胸が高鳴る。こういう状況でも、やっぱり先生のことが好きなので仕草一つ一つに目がいってときめいてしまう。

「また告白するとか言って。こっちが適当に言った三年をこれまた律儀に守るし」

 おかしそうに笑う先生の顔を見て今度こそ堪えていた涙が溢れた。

「もう参ったよ。お前の気持ちが本気だって言うことは十分に伝わった」

「先生、私のこと好きですか?」

「それは告白しないと分からないんじゃないか?」

 すっかりいつもの調子に戻った先生のまさかの返答に私はなんだかさっきとは違う意味で泣きたくなった。

「え、いや。だって今更」

 もう自分の気持ちはほとんど言ったようなものだし、何より先生にはバレバレだったようだ。だからもういいんじゃないか、と思ったけど先生は許してくれなかった。

「今更でも聞かせてくれないか。ずっと待ってたんだ」

 いつもよりずっと近い距離でそんなことを言われて私の心臓は壊れそうだった。本当はメイクも服もばっちり決めた状態で言いたかった。少しは大人になった私で言いたかった。

 今の自分は服も顔もぼろぼろで描いていた理想とは程遠い。それでも私は軽く息を吸った。
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