クールな准教授の焦れ恋講義
「わざわざ用意してくれてたんですか?」

「お前がリクエストまでしてきたんだろ」

 いつぞやの帰り道を思い出して、なんだか恥ずかしくなる。強引に強請った形になって少しだけ申し訳ない。

 それでも嬉しさもあって緊張しながらも中身を開けると、そこには私の希望したとおり名刺入れがあった。クリーム色のレザー地はとても上品でフラップ部分にはゴールドのリボンがあしらわれている。

「先生、意外とセンスいいですね」

 いつも機能性を重視して、あまりこだわりのない私にとってはものすごくお洒落だ。異性のものなのに慣れているからか元々のセンスからか、こうして難なく選んでしまう先生に少しだけ嫉妬してしまう。

「意外と、は余計だ」

「ありがとうございます、大事に使いますね」

 素直にお礼を告げると、先生は躊躇いながら視線を合わせてきた。

「誕生日は、また改めて祝ってやるから」

「もういいです。一番欲しいものをもらえましたから、十分です」

「そういうわけにもいかないだろ」

「そこまで言うなら、矢野さんとご飯なんて勧めなくてもよかったじゃないですか」

 意外と食い下がってくる先生に口を尖らせると途端にばつの悪い顔になった。
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