御曹司は身代わり秘書を溺愛しています


「うっ……えっ……」

気が付けば私は声をあげて泣いていた。

こんなの、まるで子供みたいだ。だけど止まらない。怜人さまの海を映した瞳が浮かんで、切なくて苦しい。


私、あの人のことをこんなに好きになっていたんだ。


そう気づき、涙はますます止まらなくなった。

いくら拭っても途切れなく流れる涙に、呼吸すらままならなくなる。

その時、静かな公園に、バタバタと忙しない足音が響いた。

思わずびくりとなって顔をあげると、息を切らせて駆け寄ってくる背の高い人影が、あっという間に私の目の前にたどりついた。


よほど急いで走ってきたのか、蛍光灯の中に浮かび上がる怜人さまは、髪を乱し息を荒げている。


あまりの驚きに、呆然と彼を見つめることしかできない。


「理咲がずっと帰ってこないから探しにいったら、化粧室で言い争いをしているのを見たって人がいて……。
まさかと思ってレイチェルを問い詰めたら、あなたに酷いことを言ったと白状した。ホテル中を探したら、ロビーにあなたの靴が脱ぎ捨ててあって、心臓が止まるかと……」

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