御曹司は身代わり秘書を溺愛しています
彼の真実
長いキスを交わしたあと、怜人さまはようやく唇を離した。
そして再び額をこつんとぶつけて「もうこういうのは、絶対やめてくださいね」とささやくと、自分の上着を脱いで私の肩にかけ、ひざ裏に手を入れて私を軽々と抱き上げた。
「僕の家に帰りましょう。……いいですね?」
近い距離でじっと見つめられ、またとくんと胸が鳴る。
怜人さまのそばにいられることが嬉しくて、安心で、思わず首にぎゅっとしがみついた。
怜人さまはようやく落ち着いた私に安心したのか、足を速めて歩き出す。
体が動くたび、ひどく体が密着して……服の上からでも分かる逞しさに、また心臓がイチイチ反応する。
「怜人さま、あの、ゆっくりなら自分で歩けますから」
「怜人、でしょう?そんな足では無理です。かなり傷むでしょう?」
「でも、みんな見てますし」
公園からホテルまでは大通りに面していて、タキシード姿の怜人さまが真っ赤なドレスを着た私をお姫様抱っこして歩く姿は、相当目立っている。
昼間に比べれば人通りは少ないとはいえ、すれ違う人々ほぼ全員が振り返り、中にはスマホで撮影する外国人すらいる。
「見たい人には見せればいいでしょう。僕は全く構わない。……あなたは嫌ですか?」