御曹司は身代わり秘書を溺愛しています

「まずレイチェルが言ったことからです。彼女があなたに何を言ったかは分かりませんが、多分あなたのお父様の会社のことでしょう。
そのことに関して、あなたに黙っていたことがあります。僕は以前、葉山化学工業と英国資本の製薬会社との業務提携を進めていました」

「えっ……。でもそんなことは、父から聞いていません」

「同時期にお父様のビジネスパートナーである岡部氏と光本製薬との業務提携も進んでいた。岡部氏は光本に何らかのコネクションを持っていて、僕の提案を結局最後まで受け入れませんでした。
葉山氏は対外折衝をすべて岡部氏に任せていたようだから、もしかしたら僕のことはご存じないかも知れませんね」



怜人さまは私にカシミアのストールをかけ、その上からしっかり力を込めて私の肩を抱いた。

穏やかな口調は、きっと私を安心させるため。


「葉山化学との提携は空振りに終わり、僕も一度はあきらめようとしました。でもどうしてもひっかっかって……。
光本製薬には、なにかとよくない噂が付きまとっていました。だから、日本の小さな民間企業が成功させた、多くの人々を救う発見を、どうしても安全な環境でバックアップしたかった。
だから経営者であるあなたのお父様に直接交渉しようと出かけたのが、あなたと会ったあのホテルでの披露宴です」

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