御曹司は身代わり秘書を溺愛しています
「だからさー、ふたりで母さんを問い詰めたらいいんじゃないの」

緊張の解けきった表情で、陸が炭酸飲料の入ったペットボトルに手を伸ばす。

いかにも男子大学生の一人暮らしらしいワンルームマンションは、脱ぎ散らかした服やら雑誌やらで散らかっていたが、それも一緒に暮らしていたころの陸の部屋の雰囲気そのもので、なんだか懐かしい。


「でも、お母さんが『病気の具合が悪いからお父さんには会えないの』で通してるのには、なにかよっぽどの理由があるんだと思う。それを無理やり聞き出すのも……」


「だけど西条さんの出した条件に、父さんに会わせるってことも入ってるだろ。ならやっぱ、母さんに真実を話してもらうほかないじゃん。はっきりとは言わなかったけど、西条さん、なんか急いでたみたいだしさ」


怜人さまと陸との間で少し専門的な話がなされ、そのことに関しては、どちらかというと私より陸の方が、怜人さまの意図をきちんと把握している感じだ。


「姉ちゃんもしっかりしてくれよ。俺たちふたりで、これから大仕事しなくちゃいけないんだからさ」


そういいながら、また陸はペットボトルを口に運んだ。


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