御曹司は身代わり秘書を溺愛しています

国立大学の大学院に進むことも大変だが、陸が社長になった場合って……。

本当に会社が再建できるかどうかも、まだ分からない話だ。

そんな先のこと、と私が思っていると、私の考えなどすべてお見通しといった表情で怜人さまが言った。


「先行投資だと思ってもらえればいいよ。僕がビジネスパートナーを選ぶ条件は、常に人なんだ。経営者の人格をみた上で契約を結ぶ。投資相手を選ぶときもそうだね。

だからこれは陸君に対する、僕の一種の賭けみたいなものかな。でも今までの彼の対応で、責任感があって客観的な判断もできると確信したから、成功の自信はあるよ」


そう言いながら、緊張した面持ちの陸を見つめる怜人さまの表情は、普段私には見せない類のものだ。

見る人を圧倒させるある種の威圧感与えながら、それでいて相手を信頼しているとはっきり意思表示してみせる。

最後には、彼の期待を裏切ることなどできなくなる何かが、怜人さまにはあった。

こういの、カリスマ性っていうのかな……。


あれから食事を終え、少し陸とふたりで話したかった私は、怜人さまが渋るのを何とかなだめて彼と別れ、姉弟ふたりで陸のマンションまで帰ってきた。

そして、父と会いたいという怜人さまの希望がどうやったら叶うか、陸と相談しているというわけだ。


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