御曹司は身代わり秘書を溺愛しています
怜人さまがいて下さって、本当に良かった……。
その後いくつかの質問を終え、私たちはようやく解放された。
まだ検査が残っている陸はそのまま入院となり、私は怜人さまと一緒に帰宅した。
マンションに戻りソファでぐったりしていると、怜人さまにバスルームへ行くよう促された。
いつ間にか準備してくれた浴室には、心が癒されるような良い香りが漂っている。バスタブでゆっくりと体を伸ばすと、興奮状態だった頭が少し休まった。
冷静になると、逆に何時間か前に起こったことへの恐怖心が増してしまう。
さっき、もしも康弘さんに連れ去られていたら、一体どうなっていたんだろう……。
そう考えると、また胸の芯が恐怖で震える。それに、康弘さんが一体何を企んでるのかもわからない。
これ以上、私たち家族に何をしようというのだろう。あれほど、すべてを奪い去って行ったというのに。
入浴を終えパジャマに着替えてリビングに戻ると、ソファに腰かけていた怜人さまが立ち上がってこちらに歩み寄る。
「何か飲む?温かいミルクはどう?」
「あ……じゃあ、私が」
「僕がやります。あなたは座っていてください」