御曹司は身代わり秘書を溺愛しています
そう言ってキッチンに向かう怜人さま。なんだか離れがたくて、後追いのようにそばを離れずにいると、クスリと笑った彼は牛乳の入った小さな鍋を火にかけながら私の肩を抱く。怜人さまの大きな胸の中に納まり、肩に頭をもたせかけると、それだけで安心してしまうのだから不思議だ。
「もう大丈夫。こうして僕がそばにいるでしょう?今日は警察の方が病院にいてくださるようだから、陸くんのことも心配いりませんよ」
小さな鍋に入ったミルクはあっという間に温められ、沸点を知らせるさざ波が滑らかな表面で躍っている。怜人さまはそれをマグカップに注ぎ、作業台の上にことりと置いた。
「もう遅いから、これはベッドでね」
「え?」
「まずはあなたを運ばないと」
そう言いながらひょいと私を抱き上げ、寝室へ向かう。
そのままベッドにゆっくりと私を下ろすと、続いてキッチンから湯気の立ったマグを持ってくる。
そして「熱いから気を付けて」と用心深く私にカップを渡すと、部屋の灯りをサイドランプだけにして私の隣に座った。
背後から包み込むように、怜人さまの長い腕が胸の前で組まれる。
「お酒……?」
「ほんの少し、ブランデーを香りづけに入れただけですよ。あなたがよく眠れるように」