御曹司は身代わり秘書を溺愛しています
「だけど……もしも彼にあなたが連れ去られていたらと思うと、今でも胸が焦げ付くように疼きます」
そう淡々と言い放つと、次の瞬間、激しさを伴った唇が唐突に私のそれを塞いだ。強く貪られて、息をすることすらできない。
こんなに荒々しい怜人さまは、初めて。
抗う暇もないほど強引な怜人さまに、やっとの思いで胸に手をついて抵抗する。
「れ……待って……」
僅かに唇が離れたすきに逃れようとするものの、今度は両方の手首をつかまれて、そのまま押し倒された。
今まで経験したことのない強い拘束に、恐怖よりも戸惑いを感じて彼を見つめる。
見上げた先にある彼の表情が苦しげで、思わずハッとした。
「彼にあなたを奪われていたらと思うと……気が狂いそうだ」
そう言って見下ろされた眼差しが頼りなく揺れるのを、少しの驚愕と、あとは愛しい気持ちだけでいっぱいになって受け止める。
自分が求められているのだと、はっきりと実感した。
すき。私、この人が好きだ。
「奪われません。例えなにがあっても、私の心にはあなたしかいませんから」
そう言って微笑むと、体の力を抜いて彼にすべてをゆだねた。
「私は、もうとっくにあなただけのものです。……だから誰がどんな邪魔をしてきたって平気。だって、心は誰にも変えられないもの」
「理咲……」