御曹司は身代わり秘書を溺愛しています
怜人さまの手から力が抜ける。
激しい感情を宿していた眼差しが青く鎮まり、彼の体から緊張が消えた。そのまま、私の上にぱたりと倒れ込む。
「怜人……?」
胸の上には金色の柔らかな髪。胸に顔を埋められるのが恥ずかしくて顔が赤くなったけれど、彼にされることなら、なんだって許せる。
だから、このままふたりで絡みあって……溶け合ってしまっても本当は良くて……。
ゆっくり顔を擦り付けられるのもくすぐったくて、彼の柔らかな髪をもてあそびながらクスクス笑う。
「笑うなんてひどいな。僕は色んなことに、必死で耐えてるのに」
「ごめんなさい。だけど、くすぐったくて。それに……嬉しくて」
あまりにも幸せな時間にまた自然に笑みが漏れると、怜人さまはむくりと体を起こして私を見下ろした。
さらりと流れる金色の髪。整った顔立ちと見る人を魅了する青い瞳。それらすべてが瑞々しく潤み、私に向けられている。
「あなたには敵わないな。もう、全面的に降参します。だけど、これだけは約束して。絶対に危険な真似はしないこと。今後もし何か不穏な出来事に逢ったら、すぐ僕か、僕がいなければ六車さんに連絡すること。分かりましたね?」
「はい」