御曹司は身代わり秘書を溺愛しています

「君の事情は分からない。だけど研究者には、決してやってはいけないことがある。神の領域に手を加えるんだ。人類を破滅させることだって起こりうる。だから僕らは、いつもその境界線だけは超えてはいけないんだよ」


そう言いながら、父の視線が優しく康弘さんを見上げた。


「そういうこともちゃんと教えたつもりだったけど、僕の指導がきちんとできていなかったんだね。僕の責任だ。康弘くん、君は悪くない。だからこんなことはもうやめなさい。君のお母さんやまだ高校生の弟さんたちが、どんなに悲しむか」


「だから、もう後戻りできないんですよ!!」


康弘さんが叫ぶように言った時、細い路地から何人かの男の人たちが表れた。


「警察だ。岡部康弘、その人を離しなさい」


突然現れた警察に康弘さんがひるんだ瞬間、怜人さまが身をひるがえして康弘さんともみあい、刃物を取り上げた。


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