御曹司は身代わり秘書を溺愛しています
「そうだったんですか……。いや、父親代わりと言いながら、彼の気持ちを分かってやれなかった。今回のことには僕にも責任がある。……みんなも、本当にすまなかった」
そう言って頭を下げる父。
みんな黙っていたけれど、心の中では、だれもが罪を償った康弘さんが一日も早く平穏な生活に戻れるように願っていると思う。
「陸も……。怪我は大丈夫か」
「ほんとに、ひどい顔になって……。まだ痛むの?」
父と母が心配そうな視線を陸に向ける。
末っ子の陸は家族にとってその扱いはいつまでも小さな子供のままで、祖母に至っては「せっかくの男前が」と頭を抱えて撫でまわす始末だ。
普段ならばなすがままにされる陸だが、今日は怜人さまや六車さんがいる手前、過剰なほどその手から逃れる。
「大丈夫だよ。しばらく安全に過ごした方がいいからって、西条さんが手配してくれたホテルでゆっくりさせてもらったし」
普段なら自由自在にこねくり回せる陸が手から逃れ、不服そうな顔をしていた祖母の視線が怜人さまに注がれた。