御曹司は身代わり秘書を溺愛しています


怜人さまがその視線に優しい笑顔を返すと、祖母の顔に見たこともない恥じらいの表情が浮かぶ。


「さ、さっきから気になってたんだけど、こちらの方はどなた?」


「申し遅れました。僕は西条怜人。こちらは秘書の六車です」


そう言いながら、怜人さまと六車さんはそれぞれに名刺を差し出す。

表裏に日本語と英語の表記がなされたそれを、物珍しそうに眺める母と祖母とは対象的に、父は英文の方を真剣な表情で見つめている。


「西条さんは有名な『『Teddy 's Company』の御曹司なんだぜ。それで、父さんがもう一度研究できるように、会社の再建に力を貸してくれるって」


「えっ。それは本当ですか」


母と祖母は驚きの表情を怜人さまに向けたが、父は名刺に視線を落としたまま微動だにしない。


「陸君、その話は僕からしよう」


そう言って、怜人さまはカバンの中から分厚い資料を取り出し、父に差し出した。


「僕なりに御社の再建スケジュールを考えてみました。それは以前よりあなたの研究を評価していた英国系製薬会社の御社に対する評価と、運用のための企画書です。決して葉山社長の理念に外れるものではないと思っています」


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