御曹司は身代わり秘書を溺愛しています
真剣な眼差しを注ぐ怜人さまをしばらくじっと見つめた後、父が不意に穏やかな表情を浮かべる。
「……そうか。ならもう何も言うまい。理咲ももう大人だ。自分のことは自分で考えなさい。その代り、責任も自分でとるんだぞ。しかし、業務提携のことはまた別の話だ。さっき康弘君にも言ったが、今回のこの研究はもろ刃の剣だ。使いようによってはとても危険なパンドラの箱なんだよ。それを託すには、君がどういう人間なのかを知る必要がある。……こういう謎解きは康弘君が最も嫌ったことだけど、敢えて君にも試すよ」
そう言いながら、父はノートパソコンを起動させ、複雑なパスワードを打ち込んで外部のデータベースに接続する。
「このセキュリティはまだ誰にも破られていないんだ。多分康弘君は、外部のサーバーごとコピーして持って行ったんだろうけど、最後のパスワードだけは解けなかったんだな。僕にとっては、一番簡単なパスワードだったのに」