御曹司は身代わり秘書を溺愛しています
私、康弘さんを追いかけていたんだっけ……。
瞬時にさっきの衝撃的なシーンがよみがえり、視線を落とした。
「じゃあ、迷子……?ますます放っておけませんね。だけど残念ながら、今日はこれから直接空港に向かうし……。
さっき六車(むぐるま)さんにに伝えたから、もうすぐホテルの人が来てくれるでしょう。それまで、大人しく待っていてくださいね」
「六車さん?」
「僕の秘書です」
そう話す背後から、空気を伝わってバラバラと低い振動が伝わってくる。
えっ……!?あれは……もしかして……。
小さな点だったそれは、瞬く間に爆音とともに上空に到達すると、激しい風を巻き起こしながら下降りてくる。
「怜人(れいと)さま!」
大きな声で叫びながら、ヘリの中から五十代半ばの男の人が降りてきた。
その人に向かって、怜人と呼ばれた大天使は笑顔で片手を上げる。
「申し訳ありません。別件で手間取って遅くなりました。……怜人さま、その方は?」
「美しい夜景に呼ばれて迷い込んできたようです。すみません、何か羽織るものはないですか?」