御曹司は身代わり秘書を溺愛しています


怜人とはあれ以来会ってはいなかった。

英国資本の大手製薬会社との業務提携も順調に進み、怜人と父とは何度か会っているようだったが、彼も私もお互い連絡を取ろうとはしなかった。

父も『今回の研究に関して、理咲と怜人くんとのことは全く関係ない』と私を一切関わらせようとはしない。

ただ母と祖母は『あんたたち、あんなに仲が良かったのに……』と折に触れてしんみりするので、その都度なだめるのに骨が折れる。


メールの返信を終えると、着替えて階下の台所に降りる。

これから一人で朝食を摂り、三人分のお昼を作ってから商店街の店に行き、父が開発したレシピに従ってつくだ煮を調理するのが、現在の私の仕事だ。

全て手作りのため大量生産ができず、お客様をお待たせしてしまうのが悩みだけれど、うちの商品は手作りと安全性が売り物なので、当分はこのペースでやっていくつもりだ。


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