御曹司は身代わり秘書を溺愛しています

祖母と母は毎朝夜が明けきらないうちから漁にでる。

父の事業の再開が始まり、今は父と陸がふたりで東京に暮らし、私たちはこちらに暮らすという離れ離れの生活が続いている。

いずれまた家族で住めれば……という希望を持ち、みんなが頑張っていた。

父の新薬が世界中に発売されれば、きっとその夢も叶うだろう。

それに、事業の成功は、薬を待ち望んでいた人たちの生きる希望にもなる。

本当に……全てがいいことばかりで怖いくらいだ。




何もかもが怜人のおかげ……。



陸と約束した通り、彼は弟のスポンサーとなり、時には食事を共にして将来の相談にも乗ってくれている、と母からちらりと聞いた。

きちんと食事はとれているのか、なんて余計な心配をいつもしてしまうけど、元気でいてくれるならそれでいい。

身支度を整え、軽くメイクを整えるために洗面台に向かう。

鏡に映った自分の顔を見つめながら、不意に彼の魅惑的な青い瞳を思い出し、心が震える。


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