御曹司は身代わり秘書を溺愛しています
怜人は腕枕で私を抱きながら、さっきから私の髪を何度も梳いている。
まるで何かを確かめるみたいに……。
大切なものを扱うような優しい手が、苦しくなるほど、嬉しい。
「あなたのお父様の会社も軌道に乗ったし、製薬会社との契約もうまくいきました。それに一番懸念していた光本製薬も、案外すんなり手を引いて……。こちらでの仕事も順調だし、あちらでもこの事業のことは話題になっていてね。人々のために利益を考えずに研究に打ち込んだ優れた研究者だと、あなたのお父様はちょっとした有名人ですよ。雑誌にもインタビューが載って……」
それが発端となって、にわかに私の株が上昇したらしい。
周囲の人たちも、私のことを受け入れて下さっていると、怜人のお父様も喜んでいるそうだ。
それに、あんなに私を敵視していたレイチェルも、最近は私のことを気にかけてくれているという。
「彼女、新しく恋人ができたんですよ。自分が幸せだからか、僕にも幸せになって欲しいって」
そう言えば、さっきのレイチェル眼差しには、以前のような刺々しさは無かった。
彼女に幸せが訪れたと知り、なんだかホッとした気分だ。