御曹司は身代わり秘書を溺愛しています

「ああ、もう……。あなたって人は、本当に全部言わなくちゃわからないんですね」

「だから、何が……」


また何か粗相をしてしまったのではと慌てる私の髪を、クスリと笑った怜人が優しくなでる。


「もう二度と僕から離れないで欲しい。もう身代わりの秘書なんかじゃなくて、僕だけの大切な人になってください」


そう言って引き寄せると、強く抱きしめられた耳元で、彼の優しい声がした。


『Will you marry me?』


思いもよらない彼の言葉に、嬉しくて……思わず涙があふれる。


「理咲……?」


そっと覗き込んだ青い瞳に、泣き笑いでうなづいた。

彼と出会い、さまざまなことを通じて彼の優しさと強さを知り、そして深い孤独を知った。

そんな彼に惹かれてしまう自分を止められなくて、気づいた時にはもう、後戻りできないほど愛してしまっていたけれど……。

本当はホテルのヘリポートで最初に出会ったあの時から、きっと私はこの瞳に恋をしていたんだ。


「理咲……。あなたの返事を聞かせて」


煌めく瞳で私を見つめる甘い王子様に、涙を拭いて、とびきりの笑顔で答える。


「はい……。私もあなたと、ずっと一緒にいたい」


それから交わす口づけは、融けるほど熱く、夢のように甘く、また彼の熱い思いで体の隅々まで満たされる、長い夜がふけていく。


そして私は、偽物なんかじゃなく、本物の私になる。

彼の腕の中で、本物の愛に包まれて。




                          

《終わり》
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