御曹司は身代わり秘書を溺愛しています


確かにロンドンについてからは、社交の場でのマナーレッスンやダンスの練習、それに英会話のレッスンなどが忙しかった上、ドレスコードが定まっているそれぞれの場所への出席に必要なドレス選びや親しい方へのクリスマスプレゼント選びなどで毎日予定がびっしりだった。

同じく仕事で忙しくしていた怜人とは、こちらに滞在している二週間のうち食事を何度かしただけで、あとはゆっくり話せる時間はほぼなかったと言っていい。

私の面倒を見てくれたのは主に秘書のクラウディアで、第一秘書の六車さんは、本社で忙しく動き回る怜人のフォローで身動きが取れない状態だ。

怜人の家はロンドンからほど近い高級住宅街にある、クラシカルな漆喰のアパートメント。

一見古くて温かな印象の建物だけど、コンシェルジュのいる建物は、一旦中に入れば日本では考えられない重厚な警備に守られている。

怜人はそこに一人暮らしだ。

広すぎるスペースに、何人かのお手伝いさんが出入りしていて、生活には全く困らないけれど……。

あまりにも整然とした無機質な部屋の様子に、少し寂しい気がするのが本音だった。



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