御曹司は身代わり秘書を溺愛しています

それに、お手伝いさんが用意してくれたのは客室用の寝室で、あまりにも完璧に整えられた部屋を与えられてしまった私は、結局そこでひとりで眠ることになり……。

毎日帰ってくるのが遅かった怜人とは、結局顔を合わせないで過ごしてしまった日も何日かあった。


「本宅のメイドさんたちは皆古くからいる方たちばかりで、理咲のこともきちんとお話してあります。皆会えるのを楽しみにしているみたいだから、理咲もリラックスして過ごしてくださいね」


怜人はそう言いながら私の手を取りキスを落とす。そんな彼の態度に、いくら外国だからと言っても戸惑いが隠せない。


「あの、怜人、こういうのは、家に帰ってから……」


「これからまずは食事、それからメイドさんたちへのクリスマスプレゼントを選ぶのに付き合って下さい。用事を済ませてからじゃないと、あなたにかかりきりになってしまって、何にも仕事がはかどらない」


そう悪戯っぽく揺れた青い瞳に目を奪われた瞬間、悪戯な唇がそっと私の唇に重なった。





翌日、車を二時間ほど走らせ、アスコット家の本宅に到着した。

アスコット家は何百年もの歴史を持つ公爵家。

その歴史に相応しく、『本宅』と呼ばれるこの家は歴史の重厚さを感じさせる、古いお城のような建物だ。



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