御曹司は身代わり秘書を溺愛しています
怜人の車が門をくぐり、よく手入れされた園庭をぐるりと回遊するように坂道を上ると、ようやく見えてきた建物の前で何人かの人々が迎えてくれる。
ロンドンの郊外にあるこの土地は、もともとはアスコット家が所有していた領地だ。
長男に家督を譲ることが厳しく決められた彼の家系では、所有している土地が目減りしていかないよう、代々の当主が様々な事業を展開していたと聞く。
彼の曾祖父に当たる当主が始めた百貨店とホテル業が当たり、それ以降は資金繰りに苦労することもなく資産を守っているのだと、大方の事情は聞いていたけれど、まさかこんなに大きなお城が家だとは……。
怜人の家で働く人たちをひとりずつ紹介してもらい、リビングで温かなお茶をいただいたあと、私は二階の部屋に通された。
天井が高い部屋には、大きなガラス戸から続く広い南向きのバルコニーがつながっている。
白を基調としたインテリアは新しいものだったが、控えめながら高級感のある家具が選ばれているせいか、冬の薄い日差しをいっぱいに取り込んだ部屋の中で、新古のバランスが見事なまでに調和されている。
端正なフォルムのソファセットやレースのカーテンも素晴らしかったが、何よりも目を引いたのは天蓋付きの大きなベッドだ。