御曹司は身代わり秘書を溺愛しています


「理咲はあんなの選ばないでくれよ。……いや、君に限ってそれはないな。逆に、もう少し華やかなものをと言わなければいけないかもしれない。君はいつも控えめ過ぎる。だけど美しい花嫁のウェディングドレス姿は、ゲストに対する最大のもてなしだからね」


さりげなく放った康弘さんの言葉に、どきりと心臓が跳ねてしまう。

……ウェディングドレス!?

いきなりな大胆発言に途端におどおどしてしまう私に、康弘さんが困ったような微笑みを向ける。


「……気が早かったな。ごめん、びっくりさせて。だけど実際にこんな場面を経験すると、つい想像しちゃって」



くすくす笑いながら、私の頭をポンポンと優しくたたく。まるで小さい子にするみたいに……。こんなの、完全に子供扱いだ。それはそれで少し悔しい……。
唇を尖らせながら、私は康弘さんの耳元で言った。



「康弘さん、もうすぐ新郎新婦がこちらに」

「……あぁ、本当だ。おしゃべりはもうおしまいにしよう」



私の視線を追って、すぐそばまで歩み寄っていた新郎新婦が視界に入ると、康弘さんが優しい微笑みをふたりに向ける。その横顔を、内心ドキドキしながら見つめた。


……私、康弘さんと本当に結婚するのかな。


彼は、もう何年も前に父が勝手に決めた私の婚約者だ。


私たちのテーブルの前で新郎新婦が立ち止り、艶(あで)やかな笑顔が向けられる。
まさに華燭の祭典のヒロインを、演じているかのように。



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