御曹司は身代わり秘書を溺愛しています
「あの、三か月間だけでいいんです。お時間をいただけないでしょうか?その間に、可憐さんは相手の方とご両親を説得する準備をすると言っています。どうかそれまで、可憐さんの代わりに私をおそばに置いていただけないでしょうか」
ただ必死で、最後はすがるような気持ちで彼を見つめた。そんな私に、彼の目が大きく見開かれる。
「あなたを……僕のそばに……?」
そしてその驚愕の表情は、次第に優しい微笑みに変わっていく。
「そうか。京極家の見合い話じゃなく、あなたを僕のそばに置くって考えれば、悪くない話だ」
そう独り言のようにつぶやくと、彼は私に向かってにっこり微笑んだ。
「いいでしょう。契約成立です」
「えっ」
望みがかなったことは嬉しいけれど、なんだか不自然な流れであっさり許されてしまった。
その急激な変化に、訳が分からず面喰ってしまう。
呆然とする私にはお構いなしに、彼は淡々とスーツの内ポケットからスマホを取り出し、指を滑らせる。
「ああ、六車さんですか。至急僕のオフィスにもう一つ机を用意して下さい。新規プロジェクトのスタッフとしてひとり僕付きの秘書を採用します。詳細はまた後で」
短い通話を終え、彼は満足げ立ち上がる。
優しく見下ろされ、誘うように手を差し伸べる。
神々しささえ感じる圧倒的な美しさに、思わず見とれてしまう。
「さあ、あなたの最初の仕事です。ランチに同行してくださいますか?理咲」