御曹司は身代わり秘書を溺愛しています
「突然誘ってしまったけれど、本当に大丈夫でしたか」


次の日の夕方、運転席の怜人さまが少し心配そうに私に視線を向ける。


「はい。特に予定もありませんでしたし」


今朝、怜人さまに夕食に同行してもらえないかとのお話があり、お供させていただくことになった。

てっきり六車さんたちも一緒だと思っていたのに、ふたを開けてみれば、車に乗っているのは私と怜人さまだけだ。

しかも怜人さまが運転しているなんて、初めて見る光景だ。

……一体どこへ行くんだろう。


よくよく考えてみたら、怜人さまと夜出かけるなんて初めてのことだ。


「私、こんな恰好ですけど、大丈夫ですか?」


今日の私の服装は、紺の無難なワンピースとお揃いのジャケット。

父の会社で秘書として働きだしたときに、どんな場所でも浮かない洋服をそろえていたから今はそれを着回ししているが、平凡な日本の中小企業と違い、今働いている職場の女性たちはみんなとても華やかだ。

そんな中で、私の服装はやはり少し垢抜けない。
こんな姿で、怜人さまに恥をかかせたりはしないだろうか。

私の心配をよそに、怜人さまは楽しそうに答える。

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