御曹司は身代わり秘書を溺愛しています


四人での食事は楽しく、瞬く間に時間が過ぎた。

いっこうに尽きない話題は英国の友人たちとの思い出話から、政治経済の話題と多岐にわたる、とても楽しい時間だ。

大学の英文科で学び、高校から大学にかけて何度か短期留学を経験していた私は、不自由なく会話に参加することができたけれど、それでも怜人さまとハリーが使う専門用語には全く歯が立たなかった。

時々会話についていけない私に気づいた怜人さまが、その都度日本語に訳して説明してくれる。
その優しさが、胸に沁みた。


ひとしきり会話と食事を楽しみ、お開きになって私たちはレストランを出た。

このままホテルの駐車場に向かう私たちと、これからまた別の友人と会うハリーたちとはここでお別れだ。


『……本当に会えてよかった。私、フィルに会いたくて日本に来たようなものなの。……ねぇ、次はいつ会えるの?』


またもや怜人さまの首にぎゅーっと抱きつき、レイチェルが名残惜しそうにお別れの挨拶をしている。
そんな妹に肩をすくめながら、ハリーが私の傍らに歩み寄った。


『僕も君に会えて本当に嬉しかったよ。君みたいな日本の女の子は初めてだ。控えめでいて、きちんと自分の考えは持っている。きっと君はとても強くて、聡明な女性なんだね』


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