御曹司は身代わり秘書を溺愛しています
「さっきは驚かせてしまってすみませんでした」
視線を逸らしたまま言った怜人さまはどこか不安げで、その横顔に切なさが駆け抜ける。
「私の方こそ、申し訳ありません。せっかくお友達に会えたのに、私が不慣れなばかりにご迷惑をおかけしました」
あんな場面でのスキンシップは、欧米では当たり前のことだと聞く。
それなのに、必要以上に私が躊躇したことが、怜人さまがあんな行動をとってしまったことの原因だろう。
短期留学の経験があるとはいえ、外国の方と親密なおつきあいをしたことはなかった。
不慣れな私が同席したことで、怜人さまの大切な友人関係に傷をつけてしまったとしたら……。
そう思うと、苦しくて、胸が張り裂けそうだ。
「そうですね。あなたは、本当に色々なことに不慣れだ」
追い打ちをかけるように、怜人さまが言った。
どうしよう。怜人さまは怒っているのだろうか。
そう思うと、さらに胸が締め付けられる。
「ごめんなさい……」
どうしたら許してもらえるんだろう。私は、懇願するような眼差しを怜人さまに向ける。
「私、一体どうしたら……」
「今ここで僕と練習してください」
そう言い放つと、怜人さまはこちらをまっすぐ見つめた。
その顔にはいつもの優しさなく、ただ張りつめた表情が満ちている。
あまりにも真剣な表情に、私は言葉を失った。