御曹司は身代わり秘書を溺愛しています
「よくできました。次はキスです。ちゃんと音を立てて、相手に親和の情を伝えるもっとも重要なアクションです。僕と行動を共にする秘書なら、きちん使い分けしてもらわないと困ります。……では、どうぞ」
「はい……」
長い腕にすっぽりと包まれ優しく背中を撫でられながら、顔を寄せてきた怜人さまの頬に唇を寄せる。
かすかに触れる程度の場所でちゅ、と音をさせると、おずおずと彼の顔を覗き込んだ。
「どう……ですか」
「そうですね。距離感としては、どんな相手にも不快感を与えないとても良い出来です」
私の腰に手をまわしたまま、怜人さまは蠱惑的な微笑みを浮かべる。そして次の瞬間、ぎゅっと腕の力を込めて私を強く抱きしめた。
きゃ、と小さな悲鳴を上げた私の頭の上から、ため息交じりの声が聞こえてくる。