御曹司は身代わり秘書を溺愛しています



「昨日家に戻られたのは日付が変わっていたでしょう!?隠してもちゃんと分かってるんですよ」


口うるさく注意する六車さんに肩をすくめ、次に視線が私に移ると怜人さまが軽く眉をしかめる。


「理咲、どうしてあなたがまだ残っているんですか。遅くなると夜道が危ないから、六時には会社をでるよういつも言っているでしょう」


自分のことは棚に上げて私を叱る怜人さまに、六車さんが呆れたように言った。


「怜人さま、人のことは言えないでしょう。それに、理咲さんは怜人さまが食事もしないからと心配して、出かけていた私が戻ってくるまで待っていてくれたんですよ」

「え……」


その言葉を聞いて、怜人さまの表情が変わる。

まるで叱られた子供のようにじっと私を見つめたあと、立ち上がってそばまで近づき、六車さんがいるにもかかわらず机に手をついて顔を近づける。


「理咲、すみません。……だけど、僕ひとりで大丈夫だったのに」

「あの、昨日はお食事もとらずに残ってたって六車さん聞いていて……。連日だと体に悪いと思ったので、そろろそ何かお夜食をお持ちするつもりでした」


怜人さまは時々私をランチに誘ってくれるけれど、それ以外は仕事をしながら簡単なものをつまんで済ませてしまうことも多い。

今日だって今取り掛かっている書類作りから手が離せないのか、私が買ってきたサンドイッチを慌ただしく食べて終わりだ。それだって、半分以上残してしまっていた。

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