御曹司は身代わり秘書を溺愛しています
揺れる気持ち
「理咲、今日はどうしますか」
もうそろそろ定時という頃、怜人がご機嫌な様子で言った。
「用意はしてありますけど……。怜人さま、お仕事は大丈夫ですか?」
「ええ。最近は食事と入浴を済ませてから、家でやるようにしています。その方がここで飲まず食わずでやるより、遥かに効率的だと分かりました」
そう満足げに言うと、怜人さまはてきぱきと帰り支度をする。
「理咲、この間のように、先に銭湯に行ってから食事にしましょう。ほら、この前行った駅前のあの店はどうですか」
「あの洋食屋さんですか?おいしかったですよね。怜人さまはビーフシチューを頼んだんでしたっけ?私、今日はそれにします」
「あなたはオムライスにしたんですよね。今日は僕はなににしようか……悩みますね」
そう言いながらふたりでCEO室をでると、ちょうど秘書室に戻ってきた六車さんとばったり鉢合わせた。
「怜人さま。今日はもうお帰りですか」
「ええ、帰りに理咲と食事して、残りの仕事は帰宅してからやろうと思います」
「最近はきちんとお食事を摂られているようですね。顔色もいい。きちんと睡眠もとれているようだ……。いや、理咲さんが一緒にいてくださると、僕も助かりますよ。ありがとうございます」
六車さんが笑顔で見送るエレベータの扉が閉まると、そのまま地下の駐車場へ向かう。