御曹司は身代わり秘書を溺愛しています
そう言い残し、怜人さまが行ってしまうと、私は広いリビングに一人残された。
クラウディアが持ってきてくれた荷物を解いてみると、その内容は洗面用具や簡易な化粧品、下着類や部屋着、それに通勤着と思しきワンピースが二、三着など、どれもサイズが合ったものの上、私の好みに合うものを選んでくれている。
こういう配慮は、さすがは本国から連れてきたという『Teddy 's Company』CEOの第二秘書だ。
私は怜人さまがバスルームにいる間にと、手早く部屋着に着替え、ゆったりとしたソファに身を任せる。
ひとめで外国製だと分かるソファは、日本の三人掛けよりももう一回り大きなサイズ。
ひとり暮らしだと言っていたけれど、怜人さまは誰かとここに座って夜を過ごすことがあるのだろうか。
そんな思いが無意識にめぐり、あわてて打ち消した。
私ったら、怜人さまのプライベートを詮索するなんて、身の程知らずにもほどがある。
けれど、こんな風に怜人さまの生活する領域に触れてしまうと、どうしても気になってしまう。
それに、もし怜人さまに特別な相手がいるのなら、わずかな日数でも私が留まることなどするべきではない。
第一、怜人さまほどの人に決まった相手がいない方が不自然なことだろう。
可憐さんとのお見合い話だって、可憐さんのご両親が一方的に持ってきたものだったし……。
ふと思いつき、私はスマホを取り出し、可憐さんのアドレスをタップする。