恋なんてするわけがないっ‼
「紀田さん、好きです。」
彼の茶色く透き通った瞳はいつものように可愛らしい輝きを持ち、泣いてしまいそうなほどに潤っていた。
ライトを当てられた宝石みたいに光り、吸い込まれてしまいそうだった。
いつものあいつとは違う瞳、と思った。
そしてそれを考えると同時にこの話は断らなければならないとも思った。
「田邊君、ごめんなさい。」
田邊君は悲しげに微笑んだ。
「知っています、この先に発展しないことは。藤沢さん、ですよね?」
「そう、なの。ごめん。」
田邊君が後輩として可愛くて、断ることが申し訳なかった。
謝らないでください、と彼は言ってグラスを持つ。
グラスの中のお酒は彼の小さく開けた口に全てゆっくりと入っていった。
「ありがとう、田邊君。」
彼が席を立って、龍二さんに薄桃色の紙を渡した。
それがお会計を済ませていたとは帰るときになって知った。
帰るときの彼の横顔を照らしたオレンジ色のライトは、彼の瞳が美しく濡れ、また、そこから溢れそうな宝石をより一層光り輝かせていた。