恋なんてするわけがないっ‼
最初は彼女に責任を押し付けていた先輩だったが、外堀が埋められていって逃げられなくなった彼が言った言葉が、年下のくせに、だ。
その時の彼女の表情を俺は今もはっきりと覚えている。
泣きそうになりながらも、唇を噛み締めて強い眼差しで先輩を見ていた。
泣くまい、としているのが見ていた全員に伝わったと思う。
多分年下のくせに、だけでなく、女のくせにと言われない為にそうしていたんじゃないかと感じた。
その場では彼女は先輩の声に耳を傾けるだけで何も言わなかったが、おそらくあのときは一番の正解がそれだったと思う。
先輩は何も言わない彼女に舌打ちをしたけど、何か言っていたらそれのほうが彼の怒りに触れそうだった。
何とかその会社には事情説明をし、もとの契約内容に戻し協力をお願いすることができた。
先輩社員はというと、会社に私情で多大な迷惑をかけたとし地方に飛ばされた。
地方に飛ばされただけで済んだことに皆驚いていた気がする。