恋なんてするわけがないっ‼
移動先のデスクにはもう既に書類が置かれている。ほかの幹部メンバーのデスクにも同じ書類があることから、恐らくこのあとすぐに説明されるのだろう。
その資料を持ち上げつつ、これからお世話になる机を丁寧に雑巾で拭く。
レターボックスやらなんやらを机の端に配置し、最後にお気に入りの小さな、林檎味の飴の入った入れ物を置く。
この飴の入れ物はカラフルな透明のビーズでできたもので、入社して間もなくの誕生日で一番親しくしている友人から貰ったものだ。
こんなに可愛いものが自分のデスクにあったら不自然に見られるかもしれないとは思ったが、手作りだと言うし、なにしろ私自身こういうものが顔に似合わず好きなのだ。
それで、恥ずかしさよりそれを好きな気持ちが勝って、貰ってからずっとデスクのレターボックスの隣に存在し、私を癒やしてきたのであった。