恋なんてするわけがないっ‼
「そういうことなら、わかりました。私の方も好きに呼ばせてもらいますよー。」
そう言うと、私の方に振り返り、満面の笑みを浮かべながら駆け寄ってくる。
「ってことで、よろしくね?紅ちゃん?」
……紅ちゃん!?
いやいや、それはないでしょう。
確かに社長はそう呼ぶけどさ。
「あの、橘さん。もう一度よく私を見てください。そんな感じで呼ばれるような顔じゃないと思うのですが。」
顔と名前が一致しないのなんて中学生の時に嫌というほど思い知った。
そういうキャラじゃないんです、と付け加えて言うが、橘さんは引かない。
「いーえ、もう決定事項だから!変更受け付けませーん。あとね、私のことも呼び捨てでよろしくね、小雪って。」
私が橘さん……改め小雪ちゃんの勢いのある発言に圧倒されてしばらく呆然と立っていると、ポンと肩を叩かれた。