恋なんてするわけがないっ‼



「お疲れ様でした、お先に失礼しま……」



「紀田、これから飲みに行かねぇ?」




また、お前か……
そう嫌そうな目で訴えてみるが、彼はカバンを持ってこちらに歩いてくる。



「あ、いつものとこでいいか?」



どうやら行くことは決定しているらしい。
こうなったらもう抵抗するだけ体力の無駄だ。そう思った私は諦めて飲みに行くことにした。



返事をする代わりに、いつもの店に向かって歩く。彼はそんな私の隣で薄く笑っている。



私は少しの反抗を込めて早足に進むが、藤沢は憎たらしいぐらいの長い足で余裕に歩いてついてくる。




目の前の歩行者用信号が点滅し始め、ついでに藤沢を置いていってやろうと駆け出すと、勢い良く自分の左腕が後ろに引っ張られた。




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