恋なんてするわけがないっ‼
「アホか、お前。そんなんで走ったら転ぶし、靴擦れできるぞ。」
頭の少し上で藤沢の呆れた声がする。
勢い良く引っ張られたせいで私は見事に彼の胸の中だった。
いや、ない。
こいつはそういうのじゃない。
藤沢の目に私が可愛い同期として映ってるわけじゃないだろうし、私の目にも藤沢が男前な同期として映ってるわけじゃない。
「そもそも信号が点滅してたら、車はもう左折やら右折で危ねえだろ。気をつけろよ。」
……私はガキか。
多分可愛い同期どころか、世話の掛かる近所の子供ぐらいに思って馬鹿にしてるんじゃないだろうか。
「子供じゃないんだけど、いい加減離してくれる。」
そう言って離れ、信号が青になると先程よりも早く歩き始めるのだった。