恋なんてするわけがないっ‼
カランカランッ
「紅ちゃん…と一樹、こんばんは。二人揃っては三週間ぶりだね。」
人の良さそうな笑みを浮かべ、カクテルを作る男性はこのバーのオーナーである坂本龍二(さかもと りゅうじ)さんだ。
ちなみに彼が私を紅ちゃんと呼ぶのも抵抗したが、折れてくれないので諦めた。
「紀田が断るんだよなー。」
藤沢がなんでそんな断るかなーと言いながら、私の頭に手を乗っける。
龍二さん、どうにかしてくださいよと視線を送るが、龍二さんは笑っていつものカウンター席を勧めた。
「相変わらず仲いいね。はい、一樹にはジンと紅ちゃんには苺のカクテル。これ新作ね。」
苺…といってもカクテルの上にスライスしてあるものは赤い苺ではなく、白い苺だ。カクテル自体はほんのりピンクの色がついている。
「わ、美味しい……。甘ったるくなくて、丁度いい酸味もあって……。」
飲んでみると、苺の芳醇な香りが口いっぱいに広がり、鼻から抜けていく。
そして心地良いアルコール感。
「気に入ってもらえた?紅ちゃんが美味しいって言うなら、期間限定メニューで載せようかな。」
龍二さんは満足そうに微笑んでいる。