恋なんてするわけがないっ‼
ところが、私がこの会社に入り仕事の都合で学生時代よりも会えなくなってきて、
彼の束縛は目に見えて激しくなっていた。
「もしもし、紅?今なにしてるの?」
勤務中だと知っているはずなのに何度も掛かってくる彼からの電話。
「……浩人(ひろと)。今勤務中なの、そう何度も電話かけてこないで。」
諭すように優しく言うが、彼が電話をやめる気配もない。
「そんなこと言って、俺を騙そうとしてるんだろ?本当は男といるんじゃないのか!?」
電話に出るたび、私が他の男といるのだと勝手に思い込んではヒステリックに叫ぶ。
「いい加減にして、もう切るよ。」
携帯電話の電源を切り、バッグにしまう。
電話を切っても、懲りずに電話に出るまでかけ続けるからだ。
彼は私より1つ上で、電気製品を取り扱う会社に務めていると言っていたが、そうなると彼は勤務中にも関わらず仕事を放棄して私に電話を掛けていることになる。
大丈夫なのだろうか、そんな私の心配通り、彼はしばらくすると会社をクビになった。